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パーティーに合わせていつもより少し小綺麗な格好をした涼平がソファーに座る恭臣に声をかけた。
「それじゃ、行ってくるね」
「はい、気を付けて。何かあったら連絡くださいね、迎えに行きますから」
「心配し過ぎだってば。そんなに遅くならないうちに帰るよ」
笑顔で送り出した恭臣だったが内心は穏やかではなかった。
(涼平さんが浮気するなんて思ってはないけど悪意に疎いからな……。サークルメンバーは涼平さんが『結婚』してることを知らないし、もし参加者に涼平さんを好きだった人がいたりしたら……)
恭臣は大きく溜め息をつきながらソファーに深くもたれかかった。
(あれこれ考えたってしかたないか、信じて待とう)
貸し切りにされた小さなレストランの中には懐かしい顔ぶれが揃っていた。
それぞれの手元にグラスが準備されると、少し照れながらも幸せそうに笑う2人が立ち上がった。
「今日は俺達のためにこんな素敵なパーティーを開いてくれてありがとう。えーと、改めて言うのは照れくさいんだけど、先日入籍しました!」
「おめでとー!」
「俺達が出逢うきっかけになったのがこの映研だったから、こうしてみんなの前で報告できたことを嬉しく思っています。堅苦しいことはなしで同窓会のようなつもりで楽しんでください!」
この日の主役からの挨拶の後、各々がこのパーティーを満喫していた。主役の2人にお祝いを告げる者、久々に会う友人との酒を楽しむ者、大学時代の思い出話に花を咲かせる者。
その時、1人の女性が涼平の隣に座った。
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