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「前に恭臣くんが家に来た時はただの後輩だと思ってたからなんとも思わなかったけど、改めて考えるとね。……あぁ、でも恭臣くんは多分そうじゃなかったよね……。あの時は本当にごめんね」
「まだそんなこと気にしてたんですか?」
「だって……」
結果として付き合うことになったからってあの日のことが消えるわけじゃない。
それにあの時と違って……恭臣くんが好きだからこそ、傷付けてしまった自分が許せないんだ。
「じゃあ涼平さんからキスしてください。そしたらもう忘れますから」
「えっ、いや、それは……。そもそも恭臣くんが忘れても俺は忘れられないから……」
「えー忘れてくださいよ。俺といる時は楽しいことだけ考えててください」
「でも……」
ほんの少しだけ、恭臣くんが悲しそうな顔をした。でも楽しいことだけ、なんて絶対無理。だって今までこんな気持ちになったことなかった。
「じゃあ今は諦めます。あんまり無理強いして帰れ、なんて言われてもあれなんで。でも俺はいつでもいいですからね?」
からかうみたいにニコニコしてるけど、無理に笑ってるのかな。悲しませたいわけじゃないのに。
「それじゃあ晩飯作るんでキッチン借りますね」
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