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『それでは今年も1年お疲れ様でした! カンパーイ!』  乾杯の音頭に続いてグラスを合わせる音が響き渡る。  初めの内はどのテーブルからも日々の疲れを労う声や今年の出来事を振り返る楽しそうな声が聞こえていたが、時間が経つにつれて仕事に対する愚痴、果ては上司や客の悪口まで、酒の力でも借りなければ口にすることさえできないような言葉へと移り変わっていった。  会場の奥にある特設ステージでは時折カラオケや芸を披露する人達で盛り上がりをみせている。  もう間もなく今年が終わろうとしている。  1ヶ月程前に転職してきたばかりの瀬戸(せと)恭臣(たかおみ)は振り返る程のエピソードは持ち合わせていないため、同じ情報システム部の先輩達の思い出話をビール片手に聞いていた。  巷では飲み会に異議を唱える若者が多い、なんて言われているが恭臣はこういった集まりが嫌いではなかった。上司や先輩方に取り入るため、という打算的な気持ちもないとは言い切れなかったが。  夏に社内システムが突然停止し会社へ泊まり込んで対応する羽目になった、という彼らにとってはある意味怪談話よりも身の毛がよだつ話で盛り上がっていると、背後から恭臣の名前を呼ぶ声がした。  恭臣は振り向きそこに立っている人物の顔を確認する。人事部の部長だ。 「佐藤部長、お疲れ様です」
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