光学的擬態生物(ミミック)

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『刺殺です。現場は地下駐車場で、第一発見者は駐車場の管理会社から派遣された警備員です。詳しい推定死亡時刻は検視と解剖の結果待ちです。――ほら、昨晩の深沢の火事、あったじゃないですか。あれで消防署の要請があって検視官を派遣してるので、手間取ってるんですよ。凶器は市販の刺身包丁で、現場近くのゴミ捨て場から発見されています。凶器に付着していた血液の血液型は、ガイシャと一致。指紋は出ていません』  大木は要点をおさえて事務的にしゃべった。声が少しこもって聞こえるのは、トイレの個室ででも話しているからだろうか。 「柏木に絞り込んだ決め手はなんだ?」 『防犯カメラの映像です。ガイシャの美容外科医は、女性で三十五歳、独身、成城学園前駅の近辺のメディカルビルに自分のクリニックを持っています。その地下駐車場が現場ですが、防犯カメラに殺害の一部始終と柏木の顔がばっちり写ってるんですよ。柏木は黒のトレンチコートを着ていますが、それも柏木が行きつけのスーツ店で最近購入したものと一致します』 「ビデオの画像だけで、もう柏木にたどりついたのか」 『柏木はもともとガイシャと交友関係にあり、クリニックにも顔を出していたので受付の事務員が顔を覚えていたんです。ガイシャの財布から、柏木の名刺も出てきました』 「あまりにも不注意だな」
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