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縹と柏木が中学生の時、一つ上の学年に、たちの悪いグループがあった。気の弱そうな子をみつけてはいじめを繰り返す。
リーダー格の青木は、両親に溺愛されていて、被害者の子が学校に訴えると「うちの子が濡れ衣を着せられた」「むしろいじめられているのはうちの子のほう」と、猛烈な剣幕で苦情を言った。
青木は別の中学から転校してきていたのだが、前の学校でトラブルを起こしたときに親が都の教育委員会に乗り込んだ経緯があり、学校内では腫物のように扱われていた。
やがて、おとなしくて一種のオタクである柏木が、奴らに目を付けられてしまった。
青木は柏木を殴り、もっと痛いことをされたくなかったら、コンビニでトレーディングカードを万引きしてこい、と命令した。高値で転売できる品物だからだろう。
柏木に泣きつかれた縹は、青木に対峙した。
「盗りたいなら自分でやれよ。お前らのやり方は卑怯だぞ」
コンビニの駐車場で、青木の一派に怒鳴った。背後では、顔面を殴られた柏木が鼻血を流してうずくまっていた。
こんなとき止めることのできない激情を、正義感、と柏木は呼んでくれる。しかし、それは喜怒哀楽と同じように縹に最初から備わっていた感情で、特別なことはなにもない。
青木に立ち向かうのも、もはや勝手に体が動いた、という感じだった。
「なんだよ、こいつ」
「知ってる。一年3組の縹だろ? カッコつけんじゃねーよ。」
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