飲みすぎた男

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深夜の繁華街。 “伊吹”は今日も1人で飲み屋を回り、ついつい飲みすぎてしまった。友人からは気を付けるように言われているのだが、どうにも最近はうまい酒が多くて、ついつい飲みすぎてしまう。 「今夜は月が見えないな」 月も星も見えない空を見上げ、酔っ払った伊吹にとっては夜風の冷たさが心地よく、酒で火照った体をほんのり冷ましてくれる。 周りは飲み屋の灯りがともっており、夜も深いが賑やかだ。 (月の光はなくても飲み屋が私を照らしてくれる。穏やかな夜だ。明日は土曜で仕事もないし、もう一杯行こうかな) 伊吹が次の店を選んでいると、前から足どりのおぼつかない男が歩いてくる。 (ああ、この人も飲みすぎだな)と思っていると、その男はそのままどんどん近づいてくる。 伊吹は向かってくる男がもしかすると知り合いなのではないかと目を凝らしてみるものの、やはり見覚えはない。 男はそのまま近づいてきて、言った。 「君!君!私の劇に出てくれないか!」 突然のことに戸惑う伊吹をよそに、男は名刺を取り出し 「頼む!ぜひ君に出てほしい、君に鬼の役をやってほしいんだ!」 そこまで言ってその男、“浜田”は、吐いた。 「大丈夫ですか?ああ、もう吐いちゃったほうが楽になりますよ」 気が付くと浜田は介抱されていた。 (あれ?何をしていたんだっけ?確か劇団の仲間と飲んで、もう一軒探して・・・その後。 そうだ、酔って、でももう少し飲もうかと歩いていたら、正面に・・・)そこまで思い出したところで急いで起きあがり 「そうだ、君、君に話があるんだ」 浜田は必死に声をかけようとしたけれど、吐き気がひどくて思うように声が出ない。 「ああ、急がなくていいんで、出すものだしたらとりあえずこれ飲んで」 そういって男は、ポカリを差し出してくれる。 「今時こんな人がいるんだな、見ず知らずの私に優しくしてくれて、しかもゲロ吐いたおっさんに」浜田の想いはそのまま口から出て、目に涙が浮かぶ。世の中まだまだ捨てたもんじゃない、なんて年より臭いことが浜田の頭に浮かぶ。 「ありがとうございます」 と言って浜田は、差し出されたポカリを一気に飲んだ。 「すいません、いろいろありがとうございます。おかげさまでやっと吐き気が落ち着きました。あの、お名前は?」 浜田は介抱してくれた男に尋ねる。 「え、あ、僕?伊吹です」 「伊吹さん、いろいろお見苦しい姿を、すいません」 「いえいえ、お気になさらず。それじゃ気をつけて、飲みすぎに気を付けてくださいね」 そう言って帰ろうとする伊吹を浜田は「ちょっ、ちょっと待って」と必死に呼び止める。 「あれ、名刺は・・・」 必死に上着のポケットを探す浜田に 「さっきもらいましたよ、浜田さん」 そう言って伊吹は名刺を見せた。 「あ、もう渡していたのか。良かった」 ホッとした浜田は続けて 「伊吹さん、私は劇団で座長をしているんですが、どうしても、あなたに私たちの劇に出てほしいんです」 「さっきも酔っ払って言ってましたが、僕が劇にですか?」 「そうです!今度やる劇に、鬼の役で出てほしいんです」 「えぇ!僕が鬼の役ですか?!」 鬼の役と聞いて驚く伊吹に 「鬼の役です。さっき見かけたとき、飲んでいるからか、目が金色に輝いて見えて。そこに私の描く鬼の姿が見えたんです。」 「鬼、ですか?僕は平凡な人間なんですが鬼なんて、そんなこと初めて言われました」 「もうあなたしかいないと思ったんです!明日の土曜日はお仕事休みですか?」 伊吹がうなずこうとする前に 「そうですか!じゃあ是非私たちの劇団を見に来てくれませんか?ちょっと見てみるだけでも、お願いします」 と、浜田は畳みかけるように言った。 「まあ、そこまで頼まれたら。いいですよ。」 「じゃあ明日!お待ちしています」 そして二人はそれぞれに岐路に着いた。 次の日の昼過ぎ、伊吹は名刺に書いてあった場所へ向かった。 劇団の名は「わらし」 住所もスマホで検索すれば知らない場所でもすぐわかる。便利な世の中になったものだ。知らない場所でも簡単に向かうことができる。 劇団の中は思った以上に広い場所で、すでに十数名の人が来ており、(さてどうするか)と伊吹が考えているところに、浜田が来た。 「伊吹さん!来てくれてありがとうございます!早速なんだけど、これを見てもらえますか」 そう言って差し出されたのは台本だった。 伊吹は差し出されるままに、しばらく読んでみると、なるほど、鬼が出てくる話ではある。が、よくある鬼の話とはだいぶ違う。 「この物語は、鬼が、主人公なんですか?」 尋ねる伊吹に対して浜田は興奮気味に 「そう!鬼が主人公なんです!よくある物語や、はやりの漫画でも鬼は退治されるものでしょう?だけどこれは違う。鬼がヒーローになる物語なんです!」 「鬼がヒーロー、ですか」 「そう、鬼がヒーロー。私は思うんです。鬼は悲しみや悔しさの象徴だと」 そう言って浜田は鬼についての考えを話し始めた。 「私はね、小さなころから鬼の出てくる話を見るたびに考えていたんですよ。鬼ってなんなんだろうか、と。鬼は悪い奴、退治されて当たり前みたいなストーリーが多いですよね。でも鬼って元は人間なんですよ。事情があって人間が鬼になってしまうのに、退治されるんです」 「うーん、確かにいつも退治されてますよね」 「でもね、現代でもいろんな苦しさや悲しさや、大変な思いからどうしようもなくなって、犯罪に走ってしまう人がいると思うんですよ。それが鬼になったということなんじゃないかと思うんです。お金がないと何も買えない時代でしょ?昔みたいに物々交換ができるわけでもなくて、お金がないと何も手に入らない。そのお金も最初からある程度持っていないと稼ぐための手段すら限定されてしまうわけで。それほどに人を追い詰める時代こそ、退治されるべき相手で、じゃあだれがそれを退治するのか。人ではできないわけです。ここで苦しむ人々を象徴する鬼が、ヒーローとして必要なんです」 「なるほど、ダークヒーローというやつですね」 冷静に、それでも熱く心の内を語る浜田を見て伊吹はそういう時代なんだなと思い、苦しみながら死んだ自分の叔父を思いだした。 「で、どうですか?やってみませんか?鬼というヒーローの役」 浜田の最後のひと押しに 「わかりました。やってみましょう」 「ほんとですか!ありがとうございます!じゃあさっそく衣装とか見てもらおうか・・・」 喜んだ浜田が次に見せたいものを紹介しようとするのを、伊吹は制して 「あ、僕も見てもらいたいものがあるので、明日またで、どうですか?」 「お、なにかあるんですね?」 「それは明日のお楽しみです」 「楽しみだなあ、何が待っているのか。じゃあ、明日のお昼頃に待ってますね」 「はい、それじゃ」 伊吹は劇団を後にした。 (浜田という男はなんともゆかいで変わった人だ。それにしても僕が鬼の役か・・・。明日の準備手伝ってもらえるかな?) 伊吹は先ほどのやり取りを思い出しながらスマホを取り出し 「もしもし、紅葉ちゃん?明日なんだけどさ・・・」 日曜日。伊吹は劇団近くの駅で、昨日電話した紅葉と待ち合わせをした。 時間通りに駅に着いたのだが、そこにはもう紅葉が待っていたので小走りに近づく。 「ごめんごめん、待った?」 「ううん、さっき来たとこだよ。てかそのかばんは何?」 伊吹の持つアルミのアタッシュケースをみて怪訝そうにする紅葉に 「ああこれ?昨日言っていたやつだよ」 「ふうん。協力するのはいいけど、ほんとにやるの?鬼の役」 「やってみようかと思うんだ。こんな機会めったにないからね」 「平和主義の伊吹君が鬼の役、ねえ」 くすっと笑う紅葉と共に、2人は劇団に向かう。 2人が劇団に着くと 「浜田さーん、伊吹さん来ましたよ」 と劇団員の1人、谷口が浜田を呼んでくれた。 小走りにやってきた浜田は 「こんにちは伊吹さん、っと、奥さん?」 浜田は紅葉に目を向けた。仕事柄これまでに美しい女性はたくさん見てきたが、妖しいと感じるほどの美しさがある。これほど惹きつける美しさがあるのに、近づいてはいけないような気がする。 「いやいや、腐れ縁の友達です」 そっけなく紅葉が答えるのを聞いて、伊吹はふふっと笑う。 別なことを浮かべてしまいそうになる頭を必死に制して、浜田は尋ねた。 「そうなんですね。それで伊吹さん、昨日言っていた見てもらいたいものっていうのは」 「ああ、それで彼女、紅葉ちゃんに来てもらったんですよ」 「おっ、そうなんですね」 「それでちょっと準備したいので、どこか着替えるところ借りれますか?」 「えーそれなら更衣室を・・・」 「じゃあ、更衣室借りますね。すいませんが、ちょっと秘密があるので、その間は誰も入らないようにしてもらいたいんですが」 「はは、鶴の恩返しみたいな。大丈夫ですよ、鍵もついてますので」 谷口を呼んで伊吹と紅葉を更衣室へ案内するように促したところで、やっと浜田は息をつけた。 更衣室を借りて鍵をかけ、伊吹と紅葉が2人きりになった時、紅葉は 「本当にやるんだね」 そう呟いた。伊吹はそれにうなずいて、アタッシュケースを机に置いた。 更衣室の外では谷口が待っていた。 (更衣室を借りる、ということは着替えてくるってことなのかな?2人とも?それとも伊吹さんだけ?) そんなことを考えている間に「ガチャ」と鍵の開く音がして、出てきたのはまさしく「鬼」だった。「えっ、えっ?」谷口は驚きで一瞬体が固まったように動けなくなってしまった。霊感も何もない谷口だが、なにか異様な気配を感じる。奇妙な威圧感に心拍数が上がるのがわかる。 額から生える2本の角、そして金色に輝く目に恐怖を感じながらも、どこか引き込まれる妖しい美しさがある。 鬼がだんだんと目の前に近づくのに、体が動かず、冷や汗だけ出てくる。 すると鬼の後ろからひょこっと覗くように紅葉が顔を出した。 「えっ、紅葉さん、ってことは、伊吹さん?!」 やっと口を開けた谷口に鬼が「ははは。驚きました?僕ですよ、伊吹です」爽やかな声で答える。ちょうどそこに浜田もやってきた。 「あ!」と谷口が大きな声をあげてスマホを触りだす。 「これ!この写真!コミケに行ったときに撮らしてもらった写真なんですけど、もしかして、これ伊吹さんじゃないですか?」 谷口が見せてきた写真には、目の前で鬼の姿をした伊吹と同じ鬼が写っていた。 周りにはアニメキャラのコスプレをしている人がいて、谷口がめくって見せる他の写真には、様々なキャラと一緒にポーズを決めている鬼の姿が写っている。 「いつも紅葉ちゃんにやってもらってるんだ。だから昨日は見せられなくて、今日来てみんなに見せようと。特殊な方法なもので、企業秘密ってやつですかね?」 アタッシュケースを持ち上げにやっとする伊吹に、谷口は「そうだったのか」と笑っていたが、浜田は納得することができない。しかしそれを口に出してはいけない気がした。 伊吹の立ち姿は細くしなやかなのに強さを感じさせる。 伊吹の体を包んでいる着物は年代を感じさせるものの、とても豪華で金糸銀糸の刺繡が施されている。角を隠すようにかぶっている狩衣は化繊ではなく、絹ではないだろうか。 (ああ、これなら必ず成功させられる。少しの違和感を除けば。) 浜田は酔っ払って伊吹に声をかけた自分を心の底からほめたいと思うことで、自分の中にある違和感を忘れようとした。 劇の練習中、紅葉はやることもないので1人見学していた。 伊吹も最初こそおぼつかないところがあったが、次第になじんでいった。 内容が“鬼のヒーローもの”というだけあって、アクションシーンもあるようだ。 殺陣の練習をしたり、ワイヤーにつられて動く伊吹の姿は普段の伊吹の雰囲気とは変わっていった。 日頃激しく運動するわけでもない伊吹も、動きがこなれていき、戦う鬼の姿がしっくりしてきている。 (意外と様になってるじゃない) 紅葉はそう思いながらも、大丈夫だろうかと心配の気持ちもある。 (インスタにでも上げれば人気者になるだろうけど、それはダメだ)そんなことを考えながら稽古を眺める。 悲しさや悔しさ、苦しさという苦悩から鬼に姿が変貌してしまった人間。 そしてその鬼が、苦しみの元を作る権力者や敵を倒し、苦しむ人々を救う話、というのもあって、心の奥底を揺さぶるような心打つシーンも多く、紅葉の瞳からは涙がこぼれる。 これは大成功するのではないだろうか。 紅葉の予想はあたり、鬼が主人公という劇にもかかわらず、異例の大ヒットを収めた。 最終日を終えた後 「伊吹さん、本当にありがとう!伊吹さんのおかげでこんなにいい劇になって、大成功になりました!」 浜田は感謝の言葉をかけた。 「いやいや、浜田さんの熱い思いや、皆さんの頑張りの結果ですよ」 周りの他の出演者もスタッフも、互いに労をねぎらった。 「本当にありがとうございました。この後なんだけど、みんなで打ち上げをしようと話していて、もちろん伊吹さんも来てくれますよね?」 興奮が冷めることない浜田の言葉に 「申し訳ない、今日はこの後紅葉ちゃんと大事な用事があって、どうしても。みんなで感動を分かち合いたい気持ちはやまやまなんですが。」 「あれ、やっぱり2人ってそういう関係?」 と口をはさむ谷口。 「それなら、しかたないですね」 そう言って残念そうにする浜田と別れ、伊吹は紅葉の元へと向かった。 「それじゃあ、大成功を祝して、乾杯!」 「乾杯!」 浜田と劇団「わらし」のメンバーは劇の大成功を祝い、打ち上げを始めた。 浜田の知人の飲み屋を貸し切りにしてもらい、皆大いに騒いだ。 「ほんとに伊吹さんの鬼の役、よかったですね。ところでどうやって伊吹さんと知り合ったんですか?まさかコミケで見ていた人に会って、一緒に演じられるなんて思ってもみませんでしたよ」 谷口が浜田の隣にやってきて聞いてくるのを「それ気になる!」と、他の劇団員にも問われたので、よし!と興奮したままの浜田は「実はな」と伊吹との出会いを聞かせた。 「えー、伊吹さんめっちゃいい人じゃないですか!そんな人、今時まだいるんですね!」 笑いながら言う谷口に 「私も同じこと思ったよ」 と、浜田もつられて笑う。 感傷に浸りつつ、その後も騒いでいると、裏方担当のスタッフが気になることを言い出した。 「それにしてもあれ、どうなっていたんだろうな」 「ん?どうかしたの」 陽気なまま聞く浜田に、裏方のスタッフが答える。 「それがですね、今日の本番中、伊吹さんをワイヤーで浮かせるシーンがあったでしょ。アクション途中の大事なところ」 「ああ、あのシーン今日よかったよな!まるで本当に飛んでるみたいにスムーズに動いてびっくりしたよ!うまいこと操作してくれてありがとうな!」 そのシーンを思い出して再び興奮する浜田だが、そのスタッフは続けて 「実はあの時、ワイヤーの操作が効かなくなってしまって。やばいやばいって裏ですったもんだしていたんです。これじゃあ肝心なところで浮かせられないって。そしたら伊吹さん、普通に浮かんで動いてるでしょ?裏ではどうしようヤバイって言ってたところなのに。それなのに浮かんで、しかも動いて。驚いている間にそこのシーンは終わっちゃったんですけど、終わった後に確認してみたら、やっぱり全然動かせなくて」 それを聞いたほかのメンバーが皆、一瞬固まって 「何バカなこと言ってんだよ。人間がワイヤーもなしに宙に浮かぶなんてできるわけないだろ」 そう言った谷口の言葉に「そうだよ!疲れて一瞬眠っちゃったんじゃないの?」そう言ってほかのメンバーは笑うものの、浜田はさーっと酔いが覚め始めた。初めて伊吹の鬼の姿を見たときの感覚を思い出し、冷や汗が出てくる。(あの違和感はやっぱり・・・) 「さあみなさん、次の料理お待たせ!たくさんあるからどんどん食べてね。今日は座長のおごりだろ?」と料理を持ってきた店主の言葉ではっと我に返った浜田は 「ここの料理は最高だからな!さあ皆、どんどん食べて飲んで」 そう言って皆を盛り上げるものの、浜田はなんだか落ち着かなかった。 浜田達劇団員が打ち上げをしているころ、伊吹は紅葉と合流し、伊吹の住むマンションに向かった。エントランス前に、2人の友人である茨木も来ており、三人は部屋へと向かう。 部屋に入り、紅葉と茨木が腰かけるなか「日本酒しかないけどいい?」と伊吹は酒を用意する。 「またお前は、飲みすぎには気をつけろよ。今回も飲みすぎが原因だって紅葉に聞いたぞ」 茨木が注意するのに続いて紅葉が 「ほんとにびっくりしたわよ、だからあれほど飲みすぎはダメだって昔から言ってるのに」 「いやー、ほんとにすみません。反省しています」 しゅんとして伊吹の声が縮こまる。 「前から言ってるだろ?お前のおじさんで俺の親友だった酒吞童子はお酒が原因で死ぬことになったんだぞ?」 「ほんと心配かけてすいません。つい飲みすぎて、ふと気がゆるんじゃって。まさかその一瞬だけ本当の姿になっちゃったところを見られてしまうとは」 「浜田さんが酔っ払ってて、気が付かなかったからいいものの。違う人に見られてたら大変だったわよ。しかも本当の姿のまま劇に出るなんて」 「いやー、浜田さんがあまりにも熱く語るものだから。にしてもコミケでの写真を谷口さんが持っていたからごまかしが聞いたというか、それ以上突っ込まれて聞かれなかったというか、谷口さんには感謝だな」 「何調子に乗ったこと言ってるの?おかげで私まで演技につきあう羽目になったじゃない。毎週貴重な休みに空っぽのアタッシュケース持ったあなたと出かけて」 「ほんとに紅葉ちゃんには感謝してるよ」 「お前のそういうとこ、酒吞童子にそっくりだわ」 そう言って茨木は一升瓶を取り出し 「まあ今日は祝いだから持ってきた、飲め!」 「え、いいんですか?」 「いいぞ。そのかわり、お前がちゃんと人間の姿を保てるように鍛えてやる。覚悟しとけよ」 「ちょっと茨木さん、勘弁してくださいよ」 大盛況で終わった劇から1カ月が経ち、浜田は劇団員から第2弾をやろうと言われていた。 伊吹に連絡を取ろうかとスマホを取り出したところで、ふと考えた。 「鬼って、なに食べてるんだろ?」
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