囮の蛹~オトリノサナギ~

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 目を開けると真っ暗だった。  いや、そうじゃない。  何かで顔が(ふさ)がれていて目を開けることができないのだ。  どういうことだ、そう言おうとして口も動かせないことに気付く。 「え? え? え?」  森宮広志(もりみやひろし)はうろたえた。  何がどうして、こうなった?   顔面に感じる圧迫感とべたりと貼りついた感じで、目と口の部分がテープで塞がれていること、手足の自由が奪われていることを理解した。  これはもしかして拉致(らち)、ってやつか? でも、どうして?  横たわっている地面はひやりと固い。  森宮は体全体を左右にゆすって、なんとか体の向きを変えようと試みた。  そもそもここはどこだ。  地面なのか建物の中なのか。 「ううううう」  唸りながらテープがはがれないものかと手足や体をひねってみるが、びっちりくっついたテープには少しの隙間も生まれなかった。 「剥がす時、痛いだろうな。いや、そうじゃなくて……」  混乱した頭で森宮は考える。  何が起こったんだろう。
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