囮の蛹~オトリノサナギ~

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 年季の入った包帯らしく薄汚れ、ところどころほつれが生じ、哀れな不気味さに(すご)みすら感じる。 「この姿に(おどろ)いているンだネエ」  包帯男は骨ばった手を広げ、自分の顔を撫でる仕草をした。 「森宮クンは仲間だから特別に見せテあげよウ」  仲間?  一体、何の仲間だ。  顔を見ればわかるのだろうか?  包帯の下にある顔はどんな顔なのか。  おそらく焼けただれた皮膚や深い傷跡、目を背けたくなるような異形(いぎょう)のものが現れるに違いない。   森宮は息を詰めるようにして、顔を覆っている包帯をくるくると解く指の動きを目で追っていた。  顔を覆っていた包帯はどんどん薄くなり、はらりはらりと落ちてつるりとした(ほほ)と薄桃色の唇が現れる。 「え?」  予想外、というのはこのことか。  最後に巻かれた包帯が外され、現れた顔は綺麗(きれい)だった。  卵型の顔にくっきりしたアーモンド形の目、すっと高い鼻の下には薄くも厚くもない唇が結ばれている。まるで絵にかいたような「誰もが好感を持つ顔」だ。  なぜこの顔を包帯で覆わなくてはならないのだ。
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