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何か事件を起こして手配中の男性─見たところ二十代後半か三十代前半に見える─の中に似たような顔立ちの男がいなかったか思い出そうとしたが、森宮の記憶の中にこの顔はなかった。
「左右均等な作り物ノ気色悪イ顔だロ?」
森宮は首を左右に振った。
得体の知れない包帯まみれの顔より、すっきり整った今の顔の方が断然いい、と伝えたかったのだ。
「そうか、森宮クンにはわからないか。データですべてを処理する事に慣れ切っていたら、この顔は悪くないと判断されちゃうのかもしれないネエ」
薄汚れた包帯をひらひらふりながら微笑むきれいな顔に奇妙なノイズ交じりの声は違和感しかくなく、気味の悪さばかりが募る。森宮は思わず男から目を逸らせた。
「ああ、そうか。森宮クンは何も知らないんだネエ。いや、知らされていナイと言うべきか」
ぐい、と大きく一歩前に踏み出して男は森宮を覗き込み、わざとゆっくり瞬きをしてみせた。
きれいなアーチ形の瞼がぱたんと閉じてぱちりと開く。
「あ」
つるんときれいなその目は、ふたつとも義眼だった。
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