1人が本棚に入れています
本棚に追加
「うまく調教されたんだネエ、それとも過去の記憶は全部消されたってことなのカナ? あるいはもしかしてもう人間じゃないのかネエ。人工皮膚は意外に丈夫だケド、ついさっき引っこ抜いたきみの睫毛や眉毛は、もう生えてこないヨ。いくら精巧なレプリカでも、再生能力はまだないハズだ。さあ、これからどうするかネエ。オレはキミのこれからの苦悩が手に取るようにわかるヨ。そのうち森宮クンはオレに会いたいと思うようになるだろうネエ」
男は汚れた包帯を、再び自分の顔に巻き始めた。
「どうしてわざわざ包帯を巻くんですか」
手足がテープでぐるぐる巻きになっているのをなんとかほどけないものか、足をもぞもぞ動かしながら聞いてみた。
「この顔を見るたびに、ゾッとするんダ。もう人間じゃないってことを思い知らされるからネエ。死ぬことは怖くない、なにしろ寿命はもうとっくに切れているんだからネエ」
じゃあまた、と男は背を向けた。
「待ってくれ。このテープを剥がして……」
不意に男が振り向いて大きく口を開け、耳障りな声で叫んだ。
その言葉の意味を森宮は考える。
考えたくはないが、考えずにはいられない。
最初のコメントを投稿しよう!