囮の蛹~オトリノサナギ~

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「うまく調教されたんだネエ、それとも過去の記憶は全部消されたってことなのカナ? あるいはもしかしてもう人間じゃないのかネエ。人工皮膚は意外に丈夫だケド、ついさっき引っこ抜いたきみの睫毛や眉毛は、もう生えてこないヨ。いくら精巧なレプリカでも、再生能力はまだないハズだ。さあ、これからどうするかネエ。オレはキミのこれからの苦悩が手に取るようにわかるヨ。そのうち森宮クンはオレに会いたいと思うようになるだろうネエ」  男は汚れた包帯を、再び自分の顔に巻き始めた。 「どうしてわざわざ包帯を巻くんですか」  手足がテープでぐるぐる巻きになっているのをなんとかほどけないものか、足をもぞもぞ動かしながら聞いてみた。 「この顔を見るたびに、ゾッとするんダ。もう人間じゃないってことを思い知らされるからネエ。死ぬことは怖くない、なにしろ寿命はもうとっくに切れているんだからネエ」  じゃあまた、と男は背を向けた。 「待ってくれ。このテープを剥がして……」  不意に男が振り向いて大きく口を開け、耳障りな声で叫んだ。  その言葉の意味を森宮は考える。  考えたくはないが、考えずにはいられない。
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