囮の蛹~オトリノサナギ~

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 常にそう言われ、森宮自身も(きも)に銘じていたが、リストアップされたセキュリティカメラを点検して回り、最後のビルで気を抜いてしまったのかもしれない。  それでも一応、上、下、右、左、後ろと確認はしたのだ。  鍵のかかったビル入り口のガラスのドアの向こうは人気がなく(ほこり)が積もっているのが見て取れた。見上げた建物のガラス窓も全部閉じられている。がらんとした通りに人の気配はない。  異常なし。  ビルの入り口に取りつけられた球体のカメラを整備し、ぐるんぐるんと自在に回るのを確認して「よし。オーケーだ」と、思った瞬間、があん、と後頭部に強い衝撃を感じた。 「!」  反射的に振り向こうとした時、膝の後ろに再び強い衝撃を感じてあたりの景色がぐらりと揺れた。  そして今、森宮は体の自由を奪われ固く冷たい場所に転がされている。  殴られて、蹴られ、おそらく頭を打って気を失ったのだろう。  その間に、テープのような物でぐるぐる巻きにされたのだ。  手も足も固定された体では、動こうとしても(わず)かに体をひねることぐらいしかできない。 
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