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あらゆる場所にセキュリティカメラを付けてすべての人々を見張るなんてプライバシーの侵害だ、個人情報保護法違反だ、拳を振り上げた人々に「瞬時に異変を察知し、駆けつけて事件を未然に防ぎます。このシステムにより、公の場所で起きた事故や事件は速やかに解決できます。裁判が長引くことも事件が迷宮入りすることもありません。そして事件や裁判に関わる全ての人件費を減らすことが可能です」と黙らせ、政府はセキュリティシステム法を実施した。
人権無視、と騒いだ世論はその後起こった通り魔事件を分単位で解決してしまったことにより鎮圧された。
今ではみな、どこかで監視されていることを感じながらもそのことに慣れ、カメラが設置されていることは無意識化されつつあった。
だが人々がその存在を忘れても、カメラは街の風景を録画し秩序を守り続けているはずだった。
しかし、森宮が倒れている場所に誰かが駆けつけてくる様子はない。
「何だよ、これじゃあ欠陥システムじゃないか……」
ずっと完璧だと信じていたのに、なんてお粗末なんだ。
三百六十度回転カメラの設置で死角は生じないはずではなかったか。
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