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「んむむむむむう」
口を塞がれたテープが振動で震える。
「ギャギャギャギャギャ、起キタ、起キタんだネ、まるでおっきな蛹ミタイな姿だネエ」
不意にすぐ近くから声がした。
その声は、ノイズを含んだ男であることも女であることも拒否したような変質したもので、感情を持たない言葉の羅列のように単調に響いた。
奇妙な声にびくりと身をすくめ、森宮は動きを止めた。
「蛹のダンス、蛹のダンス、もっと、もっと踊レ」
「んむむむむ」
不明瞭な声を発しながら、すぐそばにいるかもしれないそいつから、少しでも離れようと身体をねじる。
「キュエッ、キュエッ、キュエッ、ギャギャギャギャギャ、面白い、面白いネエ」
不愉快な声は森宮の怯えを読み取ったかのように気味悪い笑い声をあげた。
「これから、ダヨ。これからダ」
これから?
これから何をするつもりだ。
いくら目を凝らしてもテープで塞がれた真っ黒な世界しか森宮には見えない。
「誰だ、何をする気だ」
荒く息を吐きながら問う声は口に貼られたテープに遮られ「んーんんんう」という音声に変換された。
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