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気を取り直して
しばらくしてなんとか落ち着いた僕は、両手で顔をそっと挟み込んでみる。そしておでこや鼻筋をそっと撫でてみた。
うん。よくわからない。
そもそも、もともとの僕の顔を手で撫でて確認するだなんて産まれてこの方一度もしたことが無いのだから、今こうやって触ってみたところで僕の顔が本当に変化したのかしていないのかわかるはずがないじゃないか。やっぱり鏡で確認しよう。そう考えた僕は部屋を飛び出すと、洗面所へと急ぐ。
その時”ピンポーン”と玄関のチャイムが鳴った。
誰だ。この忙しい時に。僕は今この家にはいない。いませんよー。気配を消しつつそろりそろりと床のきしむ音が鳴らないように洗面所へ向かおうとする僕。しかし、そんな僕をあざ笑うかのように”ピンポンピンポンポピンポンピンポンピンポン”と玄関のチャイムが僕に苦言を呈するかのように連続で鳴り響く。
うるさいなあ。気分がマシになったとはいえ、まだ僕は気持ちが悪いし頭が痛いんだ。動くのをやめ、気配を消すことに集中してみても玄関のピンポンは鳴りやまない。このままだとご近所迷惑にもなる。仕方がない。僕は諦めて玄関へと向かった。
「はいはい。今行きますよー」
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