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扉を開けるとそこには
玄関へ行くと決めた瞬間からピタリとピンポンは鳴り止んだ。やっぱり洗面所へと向かおうか。そんな考えが頭をよぎった瞬間、それを見透かしたかのようにまた玄関の鬼ピンポンがなり始める。嘘です。嘘ですから。ちゃんと玄関に向かいます。心の中の謝罪を受け入れてくれたのか、またしてもピンポンはピタリと鳴り止んだ。なんだよ。だれだよ。本当にもう。
「はい。なんでしょう」
玄関の扉を開けると、そこには『彼』が立っていた。え? うそ? どういうこと? なんで彼がここに居るのさ? パニックになりつつ僕が動けないままでいると、彼はおもむろに口を開いた。
「回覧板でーす」
はあ?
「じゃあ、そういうことで」
あっけにとられた僕の手に回覧板を押し付けると、彼はそそくさと向かいの家へと入って行った。そう。まるでそこが自分の家かのように。
いやいやまってまって。お向かいのお宅には彼も、ましてや彼にそっくりな人間も住んでいなかったはずだけど? って、もしかすると……。
僕はサンダルをつっかけると急いで家から飛び出した。
まさかまさかまさか
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