外部特待生の受難

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「…ほんとに来ちゃったよ………」 俺の深い溜め息の原因は数分前。 ガラッ、と前触れなく開いた教室のドア───廊下から入ってきたのは俺たちの担任。お世辞にも教師とは言い難い着崩した服に、ジャラジャラのピアス。言うなればホスト。お前が行くべきは学校ではなく夜の店だろと言われても反論はできない様な格好である。そんな教師離れしている男・五十嵐財は、「お前ら早く座らねェと犯すぞ〜」などと不穏な台詞を吐いて教壇に登った。俺のクラスメイトたちは勿論、服装は乱れまくりなのに無駄に顔面だけ整っているこの男の言葉にあっという間に骨抜きにされていた。 「おっし、全員座ったな。今日は転校生が来てっから紹介すんぞ」 「えっ」 「どうした結城」 「あ、いやなんでもないです。こんな時期に珍しいなと思いまして…」 本当に転校生が来るなんて思わなくてつい声が漏れた。のを、五十嵐は見逃してくれなかったらしい。すぐに爽やか〜な皮を被り、苦笑して頬を掻く。ビビった。俺の適応能力流石でしかない。だって前の席で肩を震わせて笑っていた柊を一瞬睨むぐらいには余裕あったもん。 「まあ転入生同士仲良くしてやれ」 「はは、そうですね」 「てことで入れ、神谷」 「おいタカラ、俺のことはヒロトって呼べって言ったろ!」 「あー、俺先生だから。何回も言うけど呼ぶとしても財センセイな。あと生徒の特別扱いはしねぇ、コイツら皆苗字呼びで我慢してんだからお前も忍耐力付けるもんだと思って我慢しろ」 ………わー、濃い。 皆ぽかんとしてるよ。てか、え? 目の前にいるのって理科の実験失敗した研究会の人かなんかなの?しかもあのグルグル眼鏡…あれ、逆に見えないだろ。まあ要約しよう。 ほんとにモジャ来ちゃったんだけど。 前を見ていた柊が興奮を抑えきれなかったらしくバッと俺の方に振り向いてきた。グッ!じゃねーよ。何でお前毬藻が来るって分かったんだよ。予言者か?ノストラダムスかなんかなのか? 「おら、自己紹介しろ」 「ああっ!そうか!悪ぃ悪ぃ。俺は神谷浩人だ!仲良くしろよなっ」 目は眼鏡でよく見えないが、ニカッと笑顔を見せたのはわかった。多分天真爛漫な子なだけなんだろう。だっ「仲良く!しろよな!」……………多分。 「ナニあの毬藻〜。仁くんたちのいる神聖な教室が汚れちゃうよ」 「仲良くなんかする訳ないじゃん」 「てか声デカ。うるさっ」 おー1番後ろの席にいる俺にも聞こえてるぞー。神谷くんに絶対聞かれてるだろ…いや、聞こえるように言っているのかもしれんが。あとうるさいのは同意です。鼓膜破れそうだもん俺。 そうして一悶着あり、神谷くんはまあ当たり前だが席に着くこととなった。 「お前は、結城……あー、あの無駄にイケメンな奴の隣だ」 ……え、俺? 待って待って。まず言わせて? ホスト教師さん、無駄なイケメンとかそれ特大ブーメランってやつだからね。
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