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剣に付いているのは、自分の血ではないのでしょう。
自分も傷つき、誰かも傷つけた。
その不浄の血が、神聖な森へと運ばれてしまったから。
恐怖に震えていたのはイブだけではなく、森もそうだったのでしょう。
だから、森の生き物たちはイブに返事ができなかったのです。
どうすれば、森は安心してくれるのでしょうか?
『浄化するんだよ』
不意に声が聞こえました。
樫の木です。
やっと口をきいてくれました。
「どうやって?」
イブは木を見上げながら問いかけます。
『雪だよ。天から降る雪は聖なるもの。白は神聖さを表す。特に今日はクリスマスイブ。人間の心も清らかになる日だからね。雪で不浄なるものを洗い流してしまえばよい』
樫の木は言います。
「うん」
イブは大きく頷くと、剣のそばにしゃがみ込みます。
それから、手袋を脱いで、純白の雪を手に取りました。
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