森の中で

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森の中で

 今日は十二月二十四日。  クリスマスイブです。  昨日から降り続いた雪が、すっぽりと街を包みました。  温暖な土地柄、めったに降らない雪を見ただけで、心がうきうきとします。  一面、銀色の世界。  聖なる日に神様からの贈り物のようです。  さく、さく、さくっ。  まだ誰も歩いていないまっさらな雪の道を。  さく、さく、さくっ。  森へと続く道を。  軽快な足音と共に進んでいく、小さな女の子の姿がありました。  さく、さく、さくっ。  帽子に隠しきれなかった、くるくるの天然パーマの髪が頬のあたりでふわふわと揺れて、大きな目を輝かせて。  ふっくらとした頬を紅潮させ、白い息を吐きながら、五歳になったばかりのイブは、森へと向かっていきます。  神社の裏には、神霊が宿るといわれる鎮守の森があります。  森はイブのお気に入りの場所なのです。
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