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さく、さく、さくっ。
近づくにつれて、木の根元に大きな塊が見えてきました。
さく、さく、さくっ。
雪でしょうか?
重みに耐え切れず、木から落ちてしまったのでしょうか?
それにしては、どっさりと落ちすぎなような気もします。
さく、さく、さくっ。
「うっ・・・」
微かに、呻き声のようなものが聞こえてきました。
「樫の木さん?」
イブは思わず、聞いてみました。
『 』
相変わらず、返事がありません。
さく、さく、さくっ。
だんだんと近づいていくと、
「ううっ・・・っつ!」
どうやら呻き声は、木の根元から聞こえてくるようです。
さく、さく、さくっ。
さらにそばまで行くと、正体がわかりました。
それは雪の塊ではなく、人間でした。
けれどその姿は、日常とはずいぶんとかけ離れています。
最初に感じたのは恐怖。
「ひっ・・・」
初めて見る光景にイブは、息をのみました。
純白のはずの雪の上に、赤い染みがそこら中に広がっています。
むっとするような独特の血の匂い。
そのそばで、うずくまるようにして、脇腹あたりを手で押さえ、鮮血を滴らせた男性の姿がありました。
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