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沈黙の理由
イブは恐怖に足が竦み、その光景を見つめるばかりでした。
『・・・・・・』
けれど、誰かが囁きます。
『・・・・・・』
言葉にならない声で。
苦しみを訴えるような声が、心の中に響きます。
イブは言葉なき声に、はっと我に返ります。
「だれ?」
『・・・・・・』
問いかけても、すぐに誰だかわかりません。
気持ちが悪いと、苦しいと感情のみが伝わってくるのです。
言葉は通じないようです。
とすると、森の生き物ではないのでしょう。
森では普通に言葉で話せるのです。
先ほどまでの恐怖はどこへ行ったのでしょうか。
空の彼方へ飛んでしまったのかもしれません。
恐怖が消えた後のイブは、冷静そのものでした。どこか大人びた表情をしています。
(じゃあ、どこから?)
理知を含んだ瞳で、イブは周りを見渡し確認します。声の主を探すために。
森の生き物でないのなら、ここにうずくまっている男性でしょうか?
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