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状況整理
よく通る美声。
目を遣って、すぐ隣にいた男を振り返る。
心配そうな視線を投げかけて来てるのは、度を越えたイケメン。
皇太子で、この少年の兄貴らしい。
7歳年上の兄ちゃん。18ということは、元の俺とほぼタメ年。
皇太子の弟ということで、ユノーと呼ばれたこの子……俺も皇族ってことらしいけど……。
うん、ここ驚くとこだよね。
なのに、ラノベ読み過ぎてたせいか「そうなんだ?」レベルで流してしまった。なんか、ものすごく申し訳ない気持ち。特に星民の皆さん、ごめんなさい。でも、国も何も見てないし、宇宙船の一角で聞かされても、正直実感なくて。
とりあえず、いろいろと整理しよう。
なんでも、とある星の皇族であるお兄さんは、公務として宇宙を外遊してたらしい。
外遊。偉い人が視察や外交なんかで、他所に訪問することだね。
宇宙規模な外回りなもんで、おっきな宇宙船で移動してて、現在もその船の中。
兄ちゃんに弟がついて来たのか、詳しいことは知らないけど、とりあえずこの外遊での皇族は二人。皇太子なお兄ちゃんと、年の離れた弟のユノー君。
後は、随行するお世話係や護衛、運航従事者だということだけど、街ごと移動ですか? ってくらい、大所帯だったりする。
厳重に守られた、安全なはずの船旅。
であるのに、ある時、出された食事に問題が起こった。
毒物混入、ってヤツ。
それを、ユノー君が口にしてしまったらしい。
兄ちゃんとの食卓、倒れたユノー君。
俺が、俺であることに気づいたのは、その後だった。
異星人の皆さんに、がっつり囲まれてた時の驚きと言ったら。
外見上は、ほぼ地球人なのに。
なんで額に三つ目の目があるんだよぉぉぉぉ。
最初、アクセサリーか何かだと思ったよ。次に妖怪だ、人外だって慌てて。
結局、いろいろ聞いた話を照合して、"異星人だ"って理解した。
したんだけど、なんで自分がそんなことになってんのか、とか、理由はさっぱり。
転生じゃなきゃ憑依系だけど、よりにもよって宇宙人。
困ったなぁ、地球の俺、どうなってんのかなぁ。なんて、思案しても答えは見つからないし。
何より独りになりたいのに。
この兄ちゃんとやらが。
ちっとも、俺を離してくれない。
おかしくない? 兄弟の距離感、おかしくない? 異星人スタイルなん、これ。
ナチュラルに弟を膝上に抱こうとするとか(拒否ったけど)、今も至近距離で隙あらば触れてこようとしてる気配ビンビンだとか。
異文化が過ぎて、カルチャーショックだよ。
俺が知ってる兄貴ってもんは、こんなに弟に関心を持ってないよ。
いくらユノーが、皇族でも珍しい金紫の瞳を持ってるからといって、この心配っぷり、母親か、恋人のそれだ。
もちろん、そんなことはあり得ない。だって兄弟だろ?
――従って、すっごく"変"だ。
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