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地球は故郷
「ケイオスか。何かあったか?」
突然、目の前の"兄ちゃん"の空気が変わる。
キリリとした視線と姿勢でもって、訪問者に問う態度。心なしか声の出し方まで違ってない?
つられて、俺もそっちを見た。
やってきたのは、落ち着いた年齢層のおじさん、ケイオスさん。
俺だって、この二日で何人かの顔と名前くらい覚えたんだ。
"私室長"という職分なんだそうだけど、"兄ちゃん"の身の回りの段取りとか、内向きの用事なんかを取り仕切っているあたり、日本でいう"執事さん"や"侍従長"みたいなお仕事っぽい。
そしてもはや省略してるけど、皆さん、額にも目がある。こっちの見た目は、なかなか慣れない。
「は、……」と、言いながら、ケイオスさんが俺を見る。
その一動作だけで、兄ちゃん自ら、ケイオスさんの元まで行く。常なら、向こうから来るはずなのに。
つまり、俺から離れた、ということは。
え、何? 俺に関すること? 俺に聞かれちゃ困ること?
そんな。
本人目の前にして、ボソボソと話さないで欲しい。
確かに"距離"は望んだけど、それって"壁"ではないわけで。
オープンさは、ぜひ求めたいです。
例えば俺の身元確認が取れたとか、元に戻してあげるよー的な朗報なら、なお嬉しい。
なんて期待を胸に抱いてたら。
「……では"地球"に……」
耳がタイムリーな単語を聞き取った。
!!
言った! いま確かに"地球"って言った!!
実は彼らが話してる言語は、当然日本語じゃないんだけども。
俺自身だって、なんかわかんない言葉を自然と使って会話してる身なんだけども。それでも、どの惑星を指して言ったか、翻訳機能みたいな感覚でばっちり理解出来てる!!
"地球"。それ、それです。俺の故郷!!
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