準備

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(なんせ平凡な高校生ですから)    そんなことを考えていると、メテリさんの柔らかな声がした。 「さ、後はこちらをどうぞ」  彼女はそう言うと、ユノーの額の目を隠すような逆三角形の装飾を頭に被せて、頭部を布で覆う。  衣装合わせ、まだ続いてた。  そしてこれはアラビア風なのか、インド風なのか。  そういえばインドに三つ目の神様がいたけど、この異星人たちとなんか関係してるのかな? なんて思いが頭をよぎる。 「少し窮屈でしょうけれど、これで万一、一般の地球人の目に触れることがあっても平気でございますよ。現地では、この(よそお)いでいかがでしょう?」  にっこりと微笑みながら、メテリさんが言う。つまり眼帯だな、額仕様の。 (あっちでこの目が見つかったら、どうなるんだろ)  特殊メイクやアクセサリーって思われるかもな。金に光る目だって、カラーコンタクトだって思って貰えそうだし。  ま、余計な注目は無いに越したことないけど。  こうして俺は、地球行きに備えていった。   ***  着せ替えに力尽きて他所行(よそい)き姿のまま、長椅子(ソファー)で思考を組み立てる。  地球に行ったら、やるべきこと。  まずはwebの確保。  ネットにつないで、日本の俺がどうなってるのか、それを知りたい。  変死とか何か、哀しいことになってないかな。事故だったらニュースになってるかも。死んでたりすると嫌だけど、確認しないことには落ち着かない。  検索で名前を入れたり、何とかして、手掛かりを探るんだ。  それ以前に、俺が知る地球と同一時間、同一世界なのか、という疑問もある。  "兄ちゃん"たちの用とやらは、まあ、"兄ちゃん"皇子に任せておこう。俺にはわからない世界だ。 (そういえば、気になること言ってたな……)  ユノーがあおっちゃった毒。  毒といっても、金眼(きんめ)持ちの皇族の身体に、普通の毒は効かないらしい。  紫ベースに、(ふち)だけ金の瞳とはいえ、ユノーにも毒の効果は及ばないとか。  えっ、じゃあなんで倒れたん?  普通の毒より強力な毒ってこと?  それでなんで今ユノー君は助かってるわけ? どゆこと? (もしかして、俺がこうなっちゃったことと関係してる?)  考えてると、集中を妨げるような一言を、背もたれ越しに耳元で(ささや)かれた。 「よく似合ってるよ、ユノー」  !?  このイケボの美形兄貴、どうにかなんない??  気配なく(そば)に来られると、心臓が跳ね上がんだろ!
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