ミスター・パーフェクトの完璧ではない婚活

10/10
前へ
/10ページ
次へ
 翌週、いつものようにカフェを訪れた。  身の内に生まれた想いについて述べ、見合いを断ったところ、大叔母は鷹揚に頷き、やはりカフェへ向かうよう指示したのだ。  見合い相手は、兄妹でカフェを切り盛りしている二十七歳。  特技はお菓子作り。  移り気なところがあり、新しいことを試してみたくなる。店に出す菓子はその日の気分で決定し、同じものを求められても困ってしまう、大雑把な性格。  タイラーとは真逆の性質だ。  ――だから貴方に合うと思うのよ。  どうやら最初から、相手は彼女だったらしい。  ――あの()には、見合いの相手を向かわせると伝えています。勿論、受ける受けないは彼女の自由。相手が誰とも告げていないわ。貴方次第よ。  大叔母の激励を胸に、タイラーは扉を開く。 「いらっしゃいませ、ミスター」 「今日は、エレーヌ・オーモンの紹介で参りました。私の名は、タイラー・カッセルです。貴女の名を教えていただけませんか」  彼女は瞠目し、ほんの少しだけ沈黙する。  やがて、はにかんだ笑みを浮かべ、頬を染め、囁くように答えた。 「サラ・メグレです」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加