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「父上、お呼びですか」
「月影か。よく来た。さあ、こちらに来なさい」
「いえ。私はここで…何か相談事でも?」
天帝が笑顔で息子に側に寄るように言ったが、それを月影は良しとしなかった。
「そうだ…氷輪のことだ。どうするのが最適か、そなたと話し合いたくてな」
氷輪はあれからまだ牢にいる。天后が大門前で斬首刑になってからは私と天帝を恨んでいるようだ。
天帝も、かつて愛した息子であるため容易に殺すこともできないでいる。
「このままでよろしいかと…氷輪はあの性格です。出せば何をしだすかわかりません。まだ成人もしていませんし…少なくとも千年ほどはあのままで良いかと」
提案すると天帝は納得したように頷いた。
「そうだな。そうしよう…ところで月影、そろそろ天宮で一緒に暮らさないか?あの宮では遠く不便も多いだろう」
「いえ。私は自分の宮で充分ですので」
そう。私が天帝になればいくらでも天宮に住むことが出来る。
「では、たまには共に食事でも…」
「所要がありますのでこれで失礼します。また何かあればお呼びください」
天帝の言葉を遮り月影は背を向けた。
二千年の間与えられなかったのだ。今更、親子の縁などいらぬ。
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