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おそらくそれが普通の感覚なのだろう。でも、由衣子は違った。
先ほど綾人が言ったように、由衣子はそのあたりはどうだっていいと思っている。由衣子の結婚の条件は家柄のいい男性であることだけ。だから、好きという感情は必要ないのだ。
「てなわけで、とりあえず俺のマンションで一緒に住まない? その間にお前の好きなやり方で俺を誘惑してこいよ。俺が負けてお前に惚れたら結婚してやる。どう? おもしろそうだろ」
楽しそうに笑っている綾人に由衣子はどう言葉を返していいのかわからない。
「言っとくけど、俺は嘘はつかないから。お前に惚れたら必ず結婚するって約束する。でも惚れなかったり、一緒にいるのが嫌になったら速攻で追い出すし結婚もしない」
「本気で言ってます?」
「本気、本気。めちゃくちゃ本気で提案してる」
「そうですか……」
由衣子は考え込んでしまう。
(こんな提案に乗ってしまってもいいのかな。それに、恋愛を一度もしたことがないのに綾人さんに好きになってもらうことなんてできるの? そもそも誘惑とはどういうことをすればいいのだろう……)
由衣子の頭の中にたくさんの疑問が浮かんでいく。
けれど、この提案に乗れば綾人との結婚の可能性がゼロではなくなるのだ。由衣子の頑張り次第で結婚できるかもしれない。
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