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「綾人さんは甘いものがお好きなんですね」
由衣子は、砂糖とミルクがたっぷりと入ったコーヒーを美味しそうに飲んでいる綾人に声を掛けてみた。
「甘いものっていうかスイーツが好きだな。三食それでもいいくらい」
カップから口を離して告げた綾人の言葉に由衣子はびっくりしてしまう。
「それはちょっと胃もたれしそうです」
「そう? 今朝もホットケーキにバターと蜂蜜たっぷりかけたの二枚食べてきたけど。昨日の夜もシュークリーム三つ食べたな」
「そんなに……」
聞いているだけで由衣子は胸やけしそうだった。
どうやら綾人は大のスイーツ好きらしい。太らないのだろうか。
見たところ綾人はスリムだし、スーツを着ていてもわかるほど引き締まった体躯をしていると思う。普段から鍛えているのかもしれない。
比べて由衣子は母親が少しぽっちゃり体型ということもあり、それが遺伝したのか食べた分だけ体にお肉がついてしまう体質だ。
常日頃から食事には気を付けて、うまくコントロールして標準体型を保っているけれど、おそらく綾人と同じペースで糖分を摂取していたら由衣子なんてあっという間に巨大化してしまうだろう。
一瞬、そんな自分を想像してゾッとした。
「さてと。ぼちぼちいい時間だから帰るか」
甘いコーヒーを飲み終えた綾人がふと腕時計に視線を落とす。伝票を手に取って立ち上がろうとするので由衣子は慌てて声を掛けて引き止めた。
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