結婚の条件

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「いや、別にあんたのことが気に入らないとかそういうんじゃないから」 たぶん由衣子がこの世の終わりとでもいうような絶望的な表情をしていたからだと思う。 やれやれと言った感じで綾人が言葉を付け足してくれた。 「そもそも俺は全部の見合いを断ってるから。もちろん今回も受ける気はない」 それは由衣子も事前に祖父から聞いていたので知っていた。 白濱グループの御曹司が見合いを立て続けに断っているというのはけっこう有名な話らしい。 これまでも大企業の令嬢や老舗旅館の令嬢、メガバンクの頭取の娘や政治家の娘などなど。財閥の流れを汲む由緒ある白濱家に相応しい家柄の女性たちと綾人はたくさんの見合いをしているらしいが、その全てを断っている。 あまりにも断り続けているためそろそろ相手の女性を見つけるのが難しくなってきた頃に花森自動車の令嬢である由衣子に順番が回ってきた。 花森家も歴史のある大きな自動車メーカーを経営する一族ではあるものの、白濱家と比べたら格下。本来ならば見合いの話などこなかったはず。 けれど、奇跡的に声が掛かったため、祖父はなにがなんでもこのチャンスを逃すまいと躍起になっている。 そんな祖父に気合を入れられ見合いの席に送り出された由衣子だけれど、どうやらこれまでの綾人の見合い相手たちのように断られてしまうらしい。 そもそもどうして綾人はそんなに立て続けに見合いを断っているのだろう……。
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