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「まぁ、でも俺も白濱家の跡取りとしての自覚はあるからいずれは結婚すると思うよ。けど今はまだひとりで気ままに過ごしたいわけ。なのに、じぃさんがしつこく見合いをセッティングするから」
「じぃさん?」
「俺の祖父。白濱グループの会長。うるさいから仕方なく見合いだけはするけど、適当に理由作って断ってんの」
そう言って、綾人はソファから腰をあげた。
「そういうわけだから俺はあんたとも結婚する気はない。でも、見合いは最後までちゃんとやるからあんたを家まで送ってく。ほら、早く帰ろ帰ろ。俺このあと映画観に行きたいんだよね」
そのまま綾人がテーブルを離れていこうとするので、由衣子は慌てて立ち上がった。
「待ってください」
綾人を追いかけると腕をぎゅっと掴んで引き止める。そんな由衣子の行動に驚いたのか綾人がぎょっとしたように振り返った。
「私は、そんな理由でお見合いを断られるのは納得がいきません」
「そう言われても俺も困るんだけど」
「私も困ります。私はどうしてもあなたと結婚しなければならないんです」
由衣子は綾人の腕にしがみつきながら必死に訴える。そのまま綾人の端正な顔立ちをじっと見上げていると、しばらくしてから重いため息が落ちてきた。
「あんたさ、もうちょっと場所を考えろよ。俺たち今ものすごく目立っちゃってるけど」
「え」
「恥ずかし~」
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