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ふと由衣子は我に返り周囲を見回す。すると、確かに店内にいる客と店員のほとんどが由衣子たちに視線を向けていた。
それに気づいた瞬間、由衣子は途端に恥ずかしくなって綾人の腕を素早く離す。
見合いを断ってさっさと帰ろうとする綾人を引き止めるため、つい必死になってしまった。
「すみませんでした」
ぺこりと頭を下げると「別に俺はいいんだけど」とのんびりとした綾人の声が返ってくる。
「あんた、なんかワケありなの? 事情くらいなら聞いてやってもいいけど、どうする? このままここで話す? それとも場所変える?」
「……場所を変えたいです」
「オーケー。じゃあ行こう」
綾人が由衣子の手を取って歩き出す。そのまま伝票をカウンターへ持っていくと、自身のカードでさっと会計を済ませて店を後にした。
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