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花森家では家長である祖父の言葉は絶対だ。
逆らうなんて許されない。
もしも祖父の意に背いたり、期待を裏切るようなことをしたりしたら、誰であろうと花森家から追放される。
一年ほど前だって――
父の妹であり由衣子にとっては叔母にあたる女性が、祖父の決めた縁談を断って花森家から追い出されたばかりだ。
由衣子はこっそりと両親の会話を盗み聞きして知ったのだけれど、叔母は好きな男性と〝カケオチ〟をしたらしい。
(きっと叔母様は花森の家よりも好きな人を選んだんだ)
まだ子供の由衣子にはカケオチの意味がよくわからなかったから自分なりにそう解釈をした。
そして、叔母のようにはなりたくないと思った。
由衣子にとって花森家よりも大事なものなどなかったから。
祖父の言いつけは必ず守る。
そうしていればきっと幸せになれるのだと、由衣子はずっと信じていた――
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