ふたりに迫る危機

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それを受け取った男がにやりと笑う。 「このリストは高く売れるぜ。いくら払えばいい?」 「いくらでも。俺は金が欲しいわけじゃない」 そう言って芳人が静かにコーヒーに口をつけた。 派手な身なりの男は芳人から受け取ったなにかを自身のジャケットのポケットにしまいながら、やはりにやにやと笑っている。 「そうだったな。あんたの目的は白濱エレクトリックを潰すことだもんな」 「正確にはそこの社長だ。俺はあいつさえ失脚させられたらそれでいい」 「ひでえ兄貴だな。かわいそうに、あんたの弟さっきまで謝罪会見開いてペコペコ謝ってたぜ。どんな気分で見てた?」 「ざまぁみろだな。兄弟といってもあいつとは半分しか血が繋がっていないから、そんなものはもう他人だ」 ふたりはいったいなんの話をしているのだろう。由衣子の心臓がバクバクと音をたてている。 「じゃ、このリストはいただいてくぜ。金はあんたの口座に後日入金する」 「ああ。リストはお前たちの好きに使ってくれ」 「もちろん。高値で売り飛ばすさ」 その後も少しやり取りをしたあとで派手な身なりの男が立ち上がり足早に店から出ていった。一方の芳人はまだ座ったままコーヒーを口にしている。 なんとなく由衣子はわかった気がした。あのふたりは悪いことをしているのだ、と。
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