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由衣子は席を立ちあがる。まだひと口も飲んでいない飲み物をテーブルに残してレジに向かいお会計を済ませた。
それから店の外に出るとバッグからスマートフォンを取り出して、その場ですぐに電話を掛ける。
『――もしもし。由衣子さん、どうされましたか』
零士はすぐに電話に出てくれた。
「零士さん。私、犯人がわかりました」
『犯人?』
「白濱エレクトリックの顧客情報を持ち出した人物です」
『え……』
突然の由衣子の言葉に零士が電話の向こうでハッと息を呑むのがわかった。
「芳人さんです。実家に向かう途中で芳人さんの姿をたまたま見掛けて。怪しげな男性と一緒に歩いていたので気になり、車から降りて後をつけました」
『後をつけた? 由衣子さん、あなた今どちらに? ご実家に帰られたのではないのですか』
「私のことはいいので続きを聞いてください」
由衣子はたった今知ったばかりの真実を早く零士に教えたかった。自然と口調が早くなってしまう。
「私、見たんです。芳人さんが怪しげな男性になにかを手渡しているところを。そのあとで、このリストは高く売れる、白濱エレクトリックを潰す、あいつさえ失脚させられたらそれでいい、と話しているのを聞きました。たぶん芳人さんは白濱エレクトリックの顧客情報を持ち出して、怪しげな男に売っていたのだと思います」
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