好きと気づいて

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なんとかして芳人の悪事を知らせないといけない。 さっきの零士への電話で伝わっただろうか。零士は由衣子の話を信じてくれただろうか。 由衣子はもう綾人とは一緒にいられないのだから、せめて最後くらいはなにかひとつ綾人のためになることをしたいと思った。綾人のことを助けたいと思った。 でも――。 このままでは芳人に襲われてしまう。 さっきは由衣子が芳人にひどいことをされたとしても綾人はどうも思わないだろうと思ったけれど、なんだかんだ言って優しい綾人のことだ。 由衣子が自ら首を突っ込んだせいでこうなっているとはいえ、白濱家の騒動に由衣子を巻き込んでしまったことに対して自分を責めてしまうかもしれない。 そうなれば由衣子はまた綾人に迷惑をかけてしまう。それだけはダメだ。なんとしてでもここから逃げないと。 でも、芳人に覆い被さられたこの状態でどうやって逃げればいいのだろう。 「震えてるの? こわい?」 芳人が由衣子を見下ろしながら意地悪く笑う。 確かに、さっきから由衣子はずっと震えている。どうしても恐怖心が勝ってしまい、逃げなければという意思はあるものの体がまったく動いてくれない。 (それでも逃げないと……! 逃げて、芳人さんの悪事を綾人さんたちに知らせないと……!)
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