好きと気づいて

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「それでも構わない。俺はとにかく綾人、お前を白濱グループの後継者から引きずり降ろせればそれでいい」 「なんだよそれ。俺、お前にそうとう嫌われてんな。ま、知ってたけど」 鬼気迫る状況だというのに綾人の口調は軽い。その態度が気に入らなかったのか芳人はさらに激昂する。 「お前のその態度が腹立つんだよ。普段はいい子ぶってるくせに俺たち兄弟の前だとたまにそうやって本性を出しやがる。今も余裕ぶっこいてるけどな、俺がやったっていう確かな証拠はないだろ」 「あるよ」 綾人はジャケットのポケットからスマートフォンを取り出すと、それを顔の前で振ってみせた。 「今の会話はここにすべて録音してある。お前が自分で全部話してくれたから証拠には十分だろ」 「なっ……卑怯だぞ、綾人っ!」 「卑怯? どっちがだよ」 芳人は声を荒げるけれど、綾人は落ち着いた態度を崩さないまま言葉を続ける。 「姑息な手を使いやがって。お前は俺を失脚させたかっただけかもしれないけどな、白濱エレクトリックの評判が下がれば白濱グループ全体にも影響するんだ。自分がいったいどれだけ大きなことをやらかしたのかよく考えてみろよ」 「……っ」 「今回の件はしっかりと会長に報告させてもらう」 冷たく言い放った綾人に対して芳人はもうなにも言葉を返さない。呆然とした様子でただベッドに座っていた。 綾人は芳人に背を向けると、由衣子と零士のいる方に向かって歩いてくる。そのまま無言でふたりの横を通り過ぎて足早に部屋から立ち去った。
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