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「綾人さん。私のことを好きになってくれたんですか」
「めちゃくちゃ好きになってる」
綾人の言葉が信じられなくて、由衣子は大きく目を見開いた。
「えっと……私のいったいどこを?」
綾人と暮らしていた約二カ月。由衣子は綾人に迷惑をかけてばかりだったと思う。それなのになぜ綾人が好きになってくれたのか由衣子はまったくわからない。
「どこって言われるとはっきりとこことは言えないけど、あえて言うなら素直なところかな」
「素直?」
「あと頑張り屋なとこ。いつも一生懸命なとこ。まぁ、たまにそれが空回ってたけどな」
「それは……すみませんでした」
そのせいで何度も綾人に迷惑をかけた覚えがあるため、由衣子は気まずくなってしまう。
「でもさ、そんな由衣子といると俺の汚れた部分がきれいになっていくというか、歪んだ部分が正されるというか、気持ちが落ち着くんだよな。気が付くと由衣子のことばかり考えてて、ずっと一緒にいたいって思ってる」
そう言って綾人が口元と目元をゆるりと緩めた。
「これって由衣子に恋してるってことだよな」
「恋……」
「俺は、由衣子が好きだ」
「綾人さん……」
綾人のストレートな想いを聞いた由衣子はふと自分の胸に手を添える。
綾人に同居の解消を言われたあの日、由衣子も綾人に対する想いに気がついた。
でも、由衣子の片想いで終わるはずだった。
好きだと気づいてもそこからはなにも始まらない。そう思っていたのに、綾人もまた由衣子を好きだと言ってくれた。
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