結婚の条件

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現在二十八歳の綾人は、白濱グループを経営する白濱家本家の次男ではあるものの、幼い頃より経営者としての才能を見出され、白濱グループ会長である祖父からの寵愛と期待を受けて育った。 いずれは白濱家の後継者としてグループの頂点に立つことがすでに決まっている。 もしも由衣子が綾人と結婚をすることができたら、花森自動車は天下の白濱グループと縁続きとなり両家の間には強固な絆が生まれる。 白濱グループの後ろ盾を得られれば業界一位も夢ではない。それが、由衣子の祖父の狙いだった。 そのためにも由衣子は必ずこの見合いを成功させなければならない。 粗相のないよう。気に入ってもらえるよう。少しでも自分をよく見せるため言動には細心の注意を払う。 そんな風に、由衣子は自宅を出たときからずっと意気込んでいた。 けれど…… いざお見合いが始まると由衣子の気合は空気の抜けた風船のようにシュルシュルと萎んでいった。 かっこよかったのだ。由衣子がこれまで出会ったどの男性よりも白濱綾人が……。 料亭でのお見合いが始まる五分前。仕立てのいいスリーピーススーツに身を包んだ綾人が会場に現れた瞬間、由衣子は思わず見惚れてしまった。 百八十は優に超えるであろう長身の綾人には入口の襖が低かったようで、入室するときは少し窮屈そうに頭を下げていた。 そして席に着き、由衣子の対面に綾人が腰を下ろした瞬間、由衣子は思わずドキリと胸が高鳴った。
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