消えてくれない

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既に深い眠りに落ちた我が子を 前に抱っこした妻が、 「あなた。飛び降りですって・・・」 と、怯えながら俯いた。 妻は次の瞬間 ハッ!と、 音を立てて息を吸った。 妻が視線を下に落とした先には あの女の赤いヒールがあった。 「ねぇ、あなた、これ、どう言うこと?」 捨て忘れの赤いヒールが 「・・・私を忘れさせないわ」 と、俺を嘲笑(わら)っているようだった。 インターフォンが鳴る。 「港警察署です。開けてください。」 俺は、知らない。 消えてくれ!何もかも! 赤いヒールが ・・・忘れさせない。 と、音を立てて倒れた。 < 完 >
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