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 浅黄くんの失踪から約一年。意思をもたないあたしは、事務所に言われるがままにソロで活動を続けた。知らないひとの詩を歌った。ラジオDJなんて慣れない仕事も引き受けた。こうして続けていれば、もしかしたらそのうち、浅黄くんが帰ってきてくれるかもって甘い考えなんかもあった。  だけど、もうそろそろ限界。  あたしは結局、あの日から走り出せないままでいる。壊れた潜水艦がもう深い海に潜れないように、シーラカンスが浅瀬で生きていけないように、あたしたちはもう走ることができない。  ねえ、浅黄くん……いま、どこにいるの?  ちゃんとご飯食べてる? 歯も磨いてる?   ピアノは弾いたりしているかな。  ギターの弦は錆びてないかな。  もう詩は書いていないのかな。  あたし、ずっと待っていたんだよ。  こうやってラジオで声をだして。  知らないひとの書いた詩も歌って。  深い深い海の底で。  いつかまたきっと迎えにきてくれる日を願って。  ぼんやり空を眺めていたシーラカンスのあたしを迎えに来る、黄色い潜水艦を夢に見て。
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