神様、もう少しだけ

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登山は順調だった。 お父さんの歩く速度に合わせて、僕も歩く。 家の周りの固いコンクリートと違って、やっぱり土の上は気持ちがいい。 「おっ、山百合が咲いてるぞ」 そう言ったお父さんの指さす先には、大きな花が咲いていた。 凄くいい匂いがする! 僕は山百合にそっと近づき、思い切り息を吸い込みながら鼻を押し当てた。 優しい匂いがする、お父さんの匂いみたいだ。 『ね、そうでしょ?お父さん!』 そう言って振り向くと、お父さんは僕を見て、一瞬目を丸くした直後に吹き出すように笑った。 『え?なんで?どうしたの?』 僕がきょとんとしていると、お父さんの指が僕の鼻をこすった。 「百合の花粉がついてるぞ」 僕の鼻をこすったお父さんの指先は、色がついていた。 僕とお父さんの幸せな時間。 僕は幸せだ。 こんな毎日がずっと続くのだろう。今日までも、これからも。
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