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僕たちの少し前に数人のグループがいた。
「おっ、あれは大学生かな?懐かしいなぁ。あんな風に仲間と登山ができるのも学生のうちだけだ」
グループの人たちを見ながら、目を細めるお父さんを見て僕も前を行くグループの人たちを見た。
男の人と――女の人もいる。
みんな楽しそうに笑いあいながら、登山をしていた。
もしも僕が言葉を話せたなら、あんな風にお父さんと登山ができるのにな。少しそんなことを思って哀しい気持ちになっていると、「なぁ、空」お父さんが僕の名前を呼んだ。
『なぁに?お父さん』
僕はお父さんを見上げた。
「登山ってのは、楽しいばかりじゃないんだ。苦しい時も、辛いときもある。けど、それを仲間たちと乗り越えるだろ。だから、一緒に登山をした仲間はずっと信頼しあえるんだ」
僕は、黙ってお父さんの話を聞いた。
「お前とも、沢山山に登っただろ?だから俺と空の絆も強い。お前は俺の大事な相棒だよ」
そう言ったお父さんと視線が合った。
僕はなんだか嬉しくなって、とてもじっとなんてしていられなくて、お父さんの周りをグルグルと飛び跳ねた。
「おっ、おいおい」
お父さんは僕につられて何度かその場で僕に合わせて回りながら、笑っていた。
「いくらお前が元気だからって、そんなにはしゃぐと、体力が持たないぞ。まだまだ先は長いんだ」
僕は『はぁい』と、お父さんの横に戻ると、再びお父さんの速度に合わせて歩き始める。
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