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夢は見ていなかった。
ただ眠っていただけだった。
遠くでお父さんの声がした。
大好きな、お父さんの声だ。
僕は今、起きているのか、それとも寝ているのかもわからないけど、ゆっくりと目を開く。
視界は相変わらずぼやけていて、良く見えない。
けど、すぐ近くでお父さんの匂いがした。
「空!空っ!そうだ!いい子だ!目を開けるんだ!死んじゃだめだっ!頼むっ」
お父さんは泣いていた。
『お父さん、泣かないで。僕はお父さんを助けられて嬉しいんだよ・・・・』
やっぱり僕は話せなかった。
けど、よかったぁ。
お父さん、助かったんだね。
『お父さん、どうか泣かないで。僕は幸せだよ。大好きなお父さん、ありがとう』
最後の・・・本当に最後の力を振り絞り、僕は頭を上げるとお父さんの頬を舐めた。
お父さんの顔は泥と涙の味がした。
もう、身体のどこも痛みはなかった。
代わりにとっても眠くて、眠くて・・・・・。
最後に聞こえたのは、泣きじゃくるお父さんの声と、その後ろから聞こえる知らない声。
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