(二)

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「なんとかなりませんか」  千代は食い下がってみた。  しかし受付の女性は「でも、ホームレスというわけではないんですよね」と言った。  ホームレス。単語は知っているけど、その意味は重い。ホームレスかそうでないのかの境界線は、限りなく薄いが決定的に遠い。アパートを追い出された時点で千代はホームレスであったが、そういうふうには見られたくなかったし、自分がそうだと思いたくはなかった。そして一度そうなってしまうと、二度と「普通」には戻れない気がした。だからなんとしても踏みとどまりたい。  だから、千代は言った。「違います」と。 「そういうことでは、受けられません」  受付の女性は、もう一度そう言った。 (続く)
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