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「チヨ・ツボイのケースはまれなケースです。ネットカフェで生活する人が生活保護を認められるケースは多くありません。収入を失い住まいを失ってしまえば、夢があってもそれに向かって努力することすら許されない状況に置かれます。それにもかかわらず、政府の保護という救いの手も、制度的不備や政治的意向などにより彼女たちを拒否しています。彼女たちはただ生きようとしているだけのに、それが拒否の壁となって立ちはだかるのです。特に住まいの人権は、その中でも最も基本的なものです。これがなければ求職活動も不可能です。そのような不自由の檻の中に個人を押し込めておくことが、本当に個人の自由を守ることになるのでしょうか。夢を叶えるかどうかはともかく、夢を叶えるために努力することができる環境を作る責任が、政府にはあるのではないでしょうか」  ナオミはそう締めくくった。  ネットカフェ難民の数について、正確な数字は把握されていない。二〇〇七年六月に行われた厚生労働省の調査では全国で約五四〇〇人と推定された。二〇二一年一一月現在、坪井千代のようなネットカフェ難民は、東京都だけでも約四〇〇〇人いると言われている。 (了)
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