(二)

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 七月には国からの給付金一〇万円を受け取ることができたものの、それ以降収入ゼロで支出が続いた。そうしてとうとう貯金も底を尽き、一二月に入って家賃を払えなくなった。  第四波と呼ばれる真冬の感染拡大局面が一段落した二月に入ると、千代の部屋の郵便ポストに一通の封書が入っていた。中を開けて見ると、『退去勧告』と書かれた紙面一枚が入っていた。家賃が払えないなら即時に退去せよ、という書類だった。  大家でもある地元の不動産会社に掛け合ったが、全く取り合ってもらえなかった。  千代はやむを得ず、持てるものを旅行用のスーツケースに押し込んで部屋を出た。テーブル、ベッドなどの家具や家電類などは持って行けなかったので、そのまま置いていくことにした。 (続く)
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