カラオケ

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「なこ!今日もカラオケ行こう!」 「うん!いいよ!」  学校が終わると帰り道、友達とカラオケに行くのがいつもの日課。 「あ〜、今日も歌った歌った」 「もう私ら毎日のように来てるね」  学校がある日は毎日のように来ているカラオケ。 「お待たせしました〜!ジンジャーエールです」  あ……。今日もいる。カラオケの店員さん。ネクタイをちょっと着崩しててかっこいい。友達には恥ずかしいから秘密にしてるけど、初めて見たときから気づいたら惹かれてた。一目惚れってやつ? 次の日 「お待たせいたしました。ジンジャーエールです」  今日は違うのか。お休みかな。 「なこ?何ぼーっとしてるの?」 「あ、ごーめんごめん!何歌う?」  そういう時もあるよね! 「じゃーねー!」  友達といつもの分かれ道。交差点私は左に曲がって、友達は右に曲がる。  あれ?あそこのアパートにいるの……。左に曲がるといつものアパートが見える。そこにはいきつけのカラオケの店員さん……と女の人……。彼女……。かな?そうだよね。かっこいいし、いてもおかしくないよね。  はぁ……。失恋か〜。まぁ、このまま好きでいても何もできなかったし。きっと客としてしか話す機会もなかっただろうしな。 「なこ!今日も行こう!」 「え?どこに?」 「カラオケだよ!カラオケ!どうしちゃったの?」 「え、あ、う、うん。そうだね……」  どうしよう。友達から誘われたけど。カラオケか……。あのお兄さんの顔見るの今は辛いかも。 「なんか元気ない?」 「え?」 「カラオケで話聞くよ?」 「カラオケか……。今日は辞めとこうかな。ファミレス行かない?」 「なこ、本当にどうしちゃったの〜。あ!そうだ。いつものカラオケじゃなくて、別のところ行く?私穴場見つけたんだ!」  いつもの……。じゃないカラオケか……。新しい出会い、あるかなぁ。でもまた失恋しそうだな。うーん、このまま落ち込んでても仕方ないしな。友達に打ち明けよう。 「じゃあそこ行こうか!」 「そうこなくっちゃ」  恋のリセットするには、新しい出会い、新しい恋だよね。やっぱり。 「この森を抜けた先だよ!」 「森?!」  本当に穴場なんだな。 「ここ!」 「す、すごい潰れそうなんだけど……」  言っちゃ悪いけど、すごい古びてる。今にも潰れそう。お客さんいるのかな? 「こんにちは〜!2人でーす!」  友達は明るく入った。 「いらっしゃいませ!2名様ですね。こちらへどうぞ」  へぇ!かっこいい。好み。タイプ。どうしよう。まただよまた。私、恋しやすいのかな……。 「はぁ〜!歌った歌った。あれ?そういえばなこ、元気でた?」 「あ、う、うん」  恥ずかしい。失恋で落ち込んでたのに、すぐに新しい恋するなんて……。 「実はさ………。」 「え?!失恋して新しい恋見つけた?早いね。さすがじゃん。で、新しい相手は?」 「お待たせ致しました〜!サイダーです」  顔が熱くなる。 「え、まさか?」 「失礼しました」  店員さんが私達の部屋をあとにした。  我ながら、バレやすいな。私は。 「ポテトも頼もう!なこ!」  友達がやけに明るく言った。 「え?!べ、別にいいけど」 「すみませーん!ポテトもいいですかー?」  友達はドアを開けてカウンターに向かって叫んだ。 「ちょ、この機械使うんじゃないの?!」 「お待たせ致しました〜!ポテトです」  またあの店員さんが私達の部屋に来た。 「ありがとうございます〜!店員さん、いつもいますよね?アルバイトですか?」  友達が店員さんに聞いた。 「ちょ、何聞いて……」 「そうです!アルバイトですよ」  店員さんはニコッと笑って言った。か、かっこいい……。 「ちなみに、アルバイト募集してますか?」  友達がまたまた聞いた。 「ちょっと、だから何を聞いて……」 「してますよ」 「私達、ここでバイトします!」  え、達?達って……。 「いらっしゃいませ、何名様ですか?」  なんでこうなったんだろう。あの日の友達の一言で私達はここでアルバイトをすることになった。  まぁ、そのおかげで一目惚れした店員さんには近づけたんだけど。あの店員さん、里見くんって言うんだ。 「なこちゃんと里見くん、朝からだったよね?もうあがっていいよ」  店長が言った。今日は日曜日だったから、朝からのシフト。 「あれ、今日の服かわいいね。ワンピース?」 「あ、はい。そうです……」  また、顔が熱くなる。可愛い……。里見くんに言われた。  制服は私服にエプロンを付けるだけだから、男女共有の更衣室。  そういえば、里見くんって下の名前なんだろう。聞いていいかな?でも、恥ずかしいな。あまり仲良くなってから日がたってないし……。でも今聞かなかったらずっと聞く機会ないよね。 「あの!」 「ん?」 「さ、里見くんって下の名前なんですか?」 「え?」  何この微妙な反応……。そうだよね。いきなり聞くことじゃないよね。 「里見って下の名前だよ。上野里見」 「え……」  さ、里見って下の名前?!え、じゃあ私は今まで、ずっと馴れ馴れしく下の名前で呼んでたの?やだ! 「昔からよく苗字なのか名前なのかわかんないって言われるんだよね」 「そ、そうなんですね」  何か恥ずかしくなってきた。 「ねぇ、お家どこ?外も暗いし、送るよ?」 「え、だ、大丈夫ですよ」 「いや、心配だから。だって森通らないと帰れないでしょ」  里見くんはそういうと私の手をとり更衣室をあとにした。  なんだか夢見たい。カラオケで失恋して、別のカラオケで新しい恋をして。こうして今一緒にいられていることが。すべてが夢見たい。  いつか、この想いも、里見くんに伝えられたらいいのにな……。
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