モノクロ・ラプソディー

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 あの時、コートにいようがいまいが全員が必死だった。きつい練習が体に染みついて力になっている確信もあった。それでも負けた。  僕はほんの数十秒、ピンチサーバーとしてコートに立っただけなのに、この世の終わりくらいに悔しかった。試合に負けたことよりも、チームの雰囲気を変える力がない自分に腹が立った。  そこで初めて気づいた。勝ち上がってくるチームは漏れなく努力をしていて、裏打ちされた自信がある。  当たり前のことだけど、勘違いしていたんだ。早見さんが主将になって、チームの雰囲気は良くなったし練習試合にも今までよりずっと手応えを感じるようになった。僕たちは特別だと、思ってしまった。  うちのバレー部はまだ新しいが県内で一目置かれるくらいには強い。でも誰ひとりうちが全国に行くとは思っていない。つまりはそういうことだ。  強いチームには型がある。積み上げてきた強くなる方法ある。僕たちにはそれがない。  特長くらいはあるけどふわふわしていて曖昧だ。早見さんみたいにプレーでチームを引っ張ることはできないけど、何か、しなくちゃ。  窓の向こうにある夕日があの日のものとあまりにも似ているから、目頭が熱くなり胸が苦しくなる。
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