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心臓の動きに耳を傾けながら非常階段を下りていった。急ぐと脈が上がり、そうなると考えが纏まらなかったり、感情を抑えられなくなる。
途中、非常用のライトが眩しくて、そんなことで激しく怒りがこみ上げ無意味に壁を殴っていた。
(マヒロ……マヒロに会うまで……違う、電話だ……マヒロ)
頭痛がする。何をしようとしていたのかとなえていないとわからなくなりそうだ。
(お願いだから、もう少しまって。マヒロに……)
急ぐと脈が上がり、そうなると頭が割れるように痛くなる。頭痛は厄介だ。思考回路が途切れ混乱してくるのだ。
どうにか階段を下りると非常階段を塞いでいる扉を押し開いた。キィと金属の音がなる。キリコの脳にダイレクトに響いた。二階のどこかにいる感染者がやはりその音に苦しめられたのか悲鳴を上げていた。
(どこ? どこにいく? ああ、そうだった)
キリコは廊下に出て始めの通路を右に折れた。壁に手を置き、焦る気持ちをなだめて歩いていく。
脈が落ち着き、感情の荒れが収まってくると自然と頭の中が整理されていく。
(私はマヒロに電話をする。そのために二階から脱出する。私はマヒロをいつだって見守っているからと伝えたい)
やるべきことはそれだけだ。生きたいとかマヒロの成長をサポートしていきたいというのはもう出来ないのだから。
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