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「どう、これでも何かのヒントになった?」
「でも先生、必ずしもエネルギーが小さくなる相転移ばかりじゃないと思うんですけど」
「え?」
「先生、今日の講義で潜熱のお話もされてましたよね。相転移の際に熱の吸収や放出が行われる、って。液体が蒸発して気体になるとき、気化熱を奪いますよね。熱はエネルギーの一種ですから、熱を放出するのはともかく、吸収する相転移はエネルギーが上がってるんじゃないですか?」
「……なかなか鋭く突いてきたね。だけど、実は液体から気体に変わる時も、エネルギーは下がっているんだ」
「どうしてですか?」
「正確に言うと『自由エネルギー』というものなんだけどね。詳しい定義を話すとなると、エンタルピーやらエントロピーやら色々説明しなきゃならないから長くなるんで端的に表現すると、その相の状態を保つためのエネルギー、とでも言えばいいかな。まず前提として、大抵の物質では、分子の間にお互いを引きつけ合う分子間力が働く。これによる位置エネルギーが、結合エネルギー。これは分子を寄り集めようとするエネルギーだ」
「はぁ」
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