一次相転移

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「分かりました。液体は気体に『変身』するんですね」 「そのとおり! 気体は分子がほとんどバラバラな状態だ。だから、どんなに温度が高くても、原理的に気体は気体のままでいられる。その状態を保つのに必要なエネルギーもほとんどいらない。だから、温度が非常に高い場合、結果的に物質の自由エネルギーは気体の状態が一番低くなるんだ。そう考えると、変分原理に反しているわけじゃない」 「へぇ……ずいぶん複雑なんですね」 「ああ。それで、話を戻すけど、確かに君の言う通り、温度が高い状態っていうのは熱エネルギーも高い。だから固体が液体に、液体が気体に相転移するのは、エネルギーが高い状態に移行しているように見える。だけどね、それは周りの温度がそうさせているだけだ。温度が低くなれば、逆に気体は液体に、液体は固体に変わっていく。そっちの方が自由エネルギーが小さくなるからね。化学反応とか核反応みたいな、エネルギーが生じるようなことが起こらない限り、物質は自分から相転移したりはしない。そう考えるとさ、物質ってのは周りに流される、主体性が全然ないヤツってことだよ」 「う……なんか、グサッときました」
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